2004年07月18日20時16分43秒
『永久機関』 [ 3分で読めるもの ]
永久機関が見つかってね、と佐田さんが誘いに来て地下都市に行くことになった。街のあちこちに地下への入り口があり、そのなかでもエスカレーターが作動している一つに私と佐田さんは潜り込んだ。長い長い、どこまでも、地の果てまでも続いているかに思えるエスカレーターに乗り、私たちは地下都市に降り立った。地下都市は、すべて鉄と鉛と錫でできており、広大な空間に立派な建造物が建ち並ぶのだが、そのすべてが歳月の経過により赤茶けて錆付いていた。天井にある巨大な照明群や、街道に一定間隔に並ぶ街灯が、その赤茶けた陰鬱な風景をぼんやりと照らしだしている。「こっちこっち」と佐田さんに案内されて、永久機関のある場所へ向かう。私にはどの道も建物も皆おなじ錆付いた風景の一部にしか見えないのだが、過去都市研究家兼過去文明発掘家の佐田さんにとっては勝手知ったるわが道なのだろう。しばらく歩いて大きな箱型の工場に辿りついた。錆付いて開けられそうにない入り口の鉄扉は、佐田さんが強引にこじあけたのだろう、錠前が壊され、わずかに開いている。身体を横にして工場内に滑り込むと、そこには巨大な肉の塊りがあった。工場内いっぱいに、肌色の肉塊が横たわっている。「これが永久機関です」佐田さんは眼鏡がずり下がるのを人差し指で押し上げながら、得意そうに肉塊を指した。「はあ。生き物ですか」私は専門家でないので永久機関が生き物だとは知らなかった。佐田さんは肉塊の正面にまわりこみ「ここが顔です」と指差す。近寄って見てみると、たしかに人の顔らしきものがある。肉塊はざっと見る限りでも全長五十メートルはありそうだが、顔は人間の胴体くらいしかなくて、えらく不恰好である。瞳はゾウのお尻のようにたるんだ瞼に閉じられ、鼻は団子鼻、唇は分厚く時々大きな吐息をもらす。全体的にとぼけた顔である。「これのどこが永久なんだい」私が聞くと、まあ見てな、と佐田さんは悪戯そうに微笑んだ。その時、工場の奥のほうから、ガラガラという車輪の音が聞こえてきた。音のほうを覗いてみると、大八車を引いたロボットが、こちらに向かってくる。大八車には、拾ってきたらしい鉄屑が山と積まれていた。「工場の奥にも出入り口があって、彼らは外の鉄屑を運んでくるのさ」佐田さんが説明する。ロボットは肉塊の顔の前まで来ると、大八車に積んだ鉄屑を肉塊の口元に運んだ。肉塊はたるんだ瞼を閉じたまま、大きな口を開けて鉄屑を飲み込み、シャリシャリと食ってしまった。ロボットは、淡々と鉄屑を肉塊の口に運び、肉塊は半分眠りながら鉄屑を食い続ける。あっという間に大八車に積まれた鉄屑の山は肉塊の口中に消え、肉塊はゲップを一つした。ロボットは空になった大八車を引いて工場の奥へと消えていき、入れ替わりに同タイプのロボットが同じように鉄屑を積んだ大八車を引いてやってきて、肉塊に給仕している。「つまり、こうさ」興味深げにそんなやりとりを見ていた私に、佐田さんが説明する。「永久機関は、すべてを食い尽くす。それとともに永久機関はでかくなる。摂取した量と同じだけ、彼は大きくなるんだ。やがて地下都市を食いつくし、地上の都市も食い尽くすだろう。都市を食い尽くしたら、次は地球そのものを食い尽くすだろうな。ここは鉄屑しかないから鉄を食ってるだけで、彼は生き物や土や水が食えないわけじゃない。このあいだ僕の弁当をやったら食ったしね。そして、地球を食い尽くした彼は、地球そのものになるんだ。肌色の、肉塊の地球、というわけさ」
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三語一行「えい とぼ たん」
本来の「永久機関」とは違うような気がする^^; まあ、でも本物もないわけだし(笑
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