2004年07月11日22時23分29秒
『根元』 [ 5秒で読もうと思えばできなくもないもの ]
庭にある無花果の木の上に、時折、子供の姿を見た。子供は、破けたシャツと半ズボンを履いた男の子であったり、その弟らしい小さな男の子であったり、薄桃色のワンピースを着た女の子であったり、あるいはその全員であったりと、見るときによって様々なのだが、見たときには「知らないふり」をするのが、我が家の暗黙のルールとなっていた。ある日、学校から帰って、縁側でミニカーで遊んでいると、例によって無花果の木の枝に、子供たちが腰掛けているのを見た。珍しく三人とも揃っていた。「遊ぼうよ」年長の男の子が、私に声をかけてきた。「無花果の実をあげるよ」弟らしき小さな子が続ける。「直に取りにおいで」女の子は白い手に握られた無花果の実を私に突き出した。私は、今更のように喉がひどく渇いていることに気づき、どうしようか、と考えた。なんだか頭がぼんやりとして、ただ喉がひどく渇いていて、でも、なにか実をとってはいけないような気がして、でも何故とっていけないのか、よくわからない。親になにか注意されたような気がするのだけれど、わからないし、喉も渇いているから、私はそろそろと無花果の木に近づいて行った。私が木によじ登り、年長の男の子が私に手を差しのべようとした時、よからぬ空気を察したのか飼い犬のジョンがワンと吼えた。私はびっくりして木から滑り落ち、木の枝にいた女の子は思わず手にした無花果の実を落とした。私はしたたかに地面に尻餅をつき、その私の股のあたりに、無花果の実が落ちた。私は枝に登ることは避けられたのだが、無花果の実を手にしてしまい、木の根元から一歩も動けなくなってしまった。以来、私は他の三人と同じように、いつもは姿が見えなく、たまに見える存在として、何年も何十年も、無花果の木の根元に座っている。
――――――――
三語一行「いち、じか、んも」
「実はつまり、黄泉の食べ物」だと教えていただいて、なるほどーと思いました。書いた本人が後で納得するな(笑
日本神話というのはまた聞きのようにしか知らないので、一度読んでみなくては^^
TrackBack
http://kakimi.blogtribe.org/tbinterface.php/0c296006c0638bee61208aa4af6bdc06
コメントは投稿されておりません。

