2006年01月23日02時35分50秒
くらくら [ 日記とか ]
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くらくらと立ちくらみするのが合図である。友人と焼き肉をがつがつと喰いビイルをガブガブと呑んで、ちょっと音入れとばかりに立ち上がると頭蓋のなかで脳が左右に揺れてくらくらとする。ああ、これはまずいなと思っているとお隣の、がやがやとやかましい新年会グループの端っこにいる女に眼がとまる。なんだか暗いというか会話に参加していないなぁ、とぼーっと見ていると周りの人たちも無視しているようで、まるで居ないかのように隣の男は酔いにまかせてワハハと笑いながら両腕を振り回してオーバーアクション、女の頭を肘で小突いてしまうのだけれど謝りもしない。女は小突かれても下をむいて畳の目なんか見てたりして、暗いなーとか思いながら私はお店のスリッパを履いてトイレにむかう。忙しく立ち働く店員さんを呼び止めて「トイレはどこですか」と聞くと、店員のおばさんは働きすぎなのか土気色した顔で、眼ばかりが妖しくひかっており「あんたと私の生の交わりはトイレの場所を聞くこととそれに答えることだけだ」と答える。「それでもいいならよくお聞き、まっすぐに行ってあの柱を右に折れるんだ」私はなんだか怒られているような気分になって、ありがとうございます、ごめんなさいと何度も頭をさげトイレへと急ぐ。一度振り返るとおばさんが相変わらず表情のない顔で剣呑な目つきでこちらをじっと見ていた。
トイレで手を洗っていると目の前の鏡面に蜘蛛が這っていた。蜘蛛は小指の先くらいのごくちっちゃい奴なのだが、ついつい私はじっと見つめてしまう。じいっと見ていると蜘蛛は意外と毛深い。眼が六つあると言うけど小さいのでよくわからない。けれど人間の眼というのはたいしたもので、さらにじいっと凝視しているとレンズの拡大率がカシャ、カシャっと上がっていき、私は顕微鏡で観察するがごとく蜘蛛を視界いっぱいに視ることができた。顕微鏡のなかで、ぎょろりと六つの眼と目があった。なにか言い出しそうな眼をしていた。ほんとになにかを言い出しそうで、いま次の瞬間にも口を開きそうだった。悲鳴がでそうなほど怖くなり、私は蜘蛛がしゃべりだす前に目をそらした。なにかとても悪い渦に巻き込まれているようで、これはいけないと真剣に考えた。
トイレから出てくると、さっきの店員のおばさんがちょうど通りかかるところだった。あ、どうも、と私が言うと、おばさんはきょとんとして、あ、ハイ、と返した。おばさんのナンダ?という顔で、私は酔いが醒めるようなかんじがした。なにかが抜けていく感覚があった。ああ抜けた、よかったよかったメデタシメデタシと安心して、友人の待つ座敷に戻った。とりあえずあの宴会席のほうは見ないようにして席についた。
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