2004年07月25日01時00分18秒
『日暮れのバス』 [ 5秒で読もうと思えばできなくもないもの ]
夕暮れ時、ひたすらバスが来るのを待っていた。山の中腹、頂上を目指す道路の途上にあるバス停である。こんな時間に山上へと登るバスはないだろうと思いながらも待っていると、予想がはずれて眼下のくねくねした道路を一台のバスが登ってくる。ふうふうひいひいと息を切らせながらようようと登ってくる古ぼけたバスだ。バスは私の前で停まり、乗り込もうとすると、帽子を目深に被った陰気そうな運転手が、これは定期券でしか乗れないよ、と言った。私は、そんなものは、と思い、おもわず上着のポケットを探ると定期券が入っていた。定期券をみせると、運転手は「あるじゃないの。人が悪いなあ」と陰気な顔をほころばせた。なにが悪いのかはわからない。バスは私を乗せると、ふうふうひいひい息を切らせながら山頂に向かって登っていく。ふうふうひいひい、随分と揺れるなあ、と思ってよく見ると車内の床や座席が波のように実際に揺れており、なにやら生き物の腹の中のようである。波打つ座席に座っている客は私と私の前の席の老婆だけであり、私はなんだか不安になってきて、前の席の老婆に「どこに向かうんでしょう」と声をかけた。老婆は皺だらけの顔をグリっとこちらに向け「さてな。わしがどこにむかうのかも知らんのに、お前さんがどこに行くかなどわかりようか」と答えてニカっと笑った。老婆はこちらに向けた首をまたグリっと前へ戻し、なにか唄うような呟くような声で続けた「わしはイカの三杯酢が好きでなあ。それを食いに登るのだ。まあ、登り降りを繰り返すとそれくらいしか楽しみはないわな。そういえば、いままで同乗者なんざおらなんだ。お前さんがはじめてだ。ひょっとすると向こうではお前さんときょうだいになるのかもなあ」
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三語一行「まつ・けん・さんば」
こういうふうに明確なオチを持ってくる、というのは、なんだか自分の作品とは違うなあ、と思いました。ところでホントに明確なんだろうか^^;?

